民事信託・家族信託アンケート京都⑤

令和4年2月にご依頼人と東京からのオンライン相談から始まった案件が、令和4年3月末に、その後のLINE、郵送のやり取りで、スムーズに進めることが出来、無事、信託組成(信託登記・信託口座開設)ができました。距離を感じなかったとの有難いお言葉を頂戴できました。

組成ももちろん大切ですが、これからの運営も大切です。

今後ともご依頼人へのフォロー体制を取り、身近に何でも気軽にご質問頂ける事務所でありたいと思います。

債務控除について

信託を組成し、信託内借入をする際は、債務控除ができるかどうか大きなキーポイントとなります。

信託内借入があるような収益物件が信託財産となっている場合、収益不動産というプラスの財産と、借入債務というマイナスの財産がどのように承継されているかで、相続税法の債務控除の適用があるかどうか判断されてしまうので、注意が必要です。

相続税法9条の2の第4項によると、受益者等の存する信託が終了した場合において、つまりは、受益者死亡により信託が終了するケースにおいて、プラスの財産は、贈与・遺贈で承継されると規定してあります。マイナスの財産については、承継されると明確に規定がありません。しかも、信託法181条では、債務を弁済した後の残余財産が帰属権利者に承継されることを想定しているように思われる。

よって、信託契約書の中で、信託終了時の債務について帰属権利者にて債務引受することも条項として設けることもひとつでしょうし、信託法176条の信託の存続擬制の規定により、相続税法9条の2の第4項の規定の適用を回避したと考えないのであれば、委託者・受益者の死亡だけで信託が終了しない設計(受益者連続型信託)とした上で、信託を終了させるなどの工夫が必要だと思われます。

そうすることにより、相続税法9条の2の第6項の適用を受けることになり、債務控除の確実な適用も可能となるのではなかろうかと思われます。

いずれにいましても、税務署の取り扱いには注意を要しますので、プロである税理士の意見を聴きながら信託組成をすることが肝要であると存じます。

【参照】相続税法

第三節 信託に関する特例

(贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利)

第九条の二 信託(退職年金の支給を目的とする信託その他の信託で政令で定めるものを除く。以下同じ。)の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者及び特定委託者をいう。以下この節において同じ。)となる者があるときは、当該信託の効力が生じた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の委託者から贈与(当該委託者の死亡に基因して当該信託の効力が生じた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

 受益者等の存する信託について、適正な対価を負担せずに新たに当該信託の受益者等が存するに至つた場合(第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、当該受益者等が存するに至つた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の受益者等であつた者から贈与(当該受益者等であつた者の死亡に基因して受益者等が存するに至つた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

 受益者等の存する信託について、当該信託の一部の受益者等が存しなくなつた場合において、適正な対価を負担せずに既に当該信託の受益者等である者が当該信託に関する権利について新たに利益を受けることとなるときは、当該信託の一部の受益者等が存しなくなつた時において、当該利益を受ける者は、当該利益を当該信託の一部の受益者等であつた者から贈与(当該受益者等であつた者の死亡に基因して当該利益を受けた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

 受益者等の存する信託が終了した場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となる者があるときは、当該給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた時において、当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた者は、当該信託の残余財産(当該信託の終了の直前においてその者が当該信託の受益者等であつた場合には、当該受益者等として有していた当該信託に関する権利に相当するものを除く。)を当該信託の受益者等から贈与(当該受益者等の死亡に基因して当該信託が終了した場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

 第一項の「特定委託者」とは、信託の変更をする権限(軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除く。)を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者(受益者を除く。)をいう。

 第一項から第三項までの規定により贈与又は遺贈により取得したものとみなされる信託に関する権利又は利益を取得した者は、当該信託の信託財産に属する資産及び負債を取得し、又は承継したものとみなして、この法律(第四十一条第二項を除く。)の規定を適用する。ただし、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第二十九号(定義)に規定する集団投資信託、同条第二十九号の二に規定する法人課税信託又は同法第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託の信託財産に属する資産及び負債については、この限りでない。

(債務控除)

第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)

 被相続人に係る葬式費用

 相続又は遺贈により財産を取得した者が第一条の三第一項第三号又は第四号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものについては、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

 その財産に係る公租公課

 その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務

 前二号に掲げる債務を除くほか、その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務

 その財産に関する贈与の義務

 前各号に掲げる債務を除くほか、被相続人が死亡の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有していた場合においては、当該営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の債務

 前条第一項第二号又は第三号に掲げる財産の取得、維持又は管理のために生じた債務の金額は、前二項の規定による控除金額に算入しない。ただし、同条第二項の規定により同号に掲げる財産の価額を課税価格に算入した場合においては、この限りでない。

 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が当該特別寄与者に係る課税価格に算入される場合においては、当該特別寄与料を支払うべき相続人が相続又は遺贈により取得した財産については、当該相続人に係る課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から当該特別寄与料の額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

第十四条 前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。

 前条の規定によりその金額を控除すべき公租公課の金額は、被相続人の死亡の際債務の確定しているものの金額のほか、被相続人に係る所得税、相続税、贈与税、地価税、再評価税、登録免許税、自動車重量税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、航空機燃料税、石油石炭税及び印紙税その他の公租公課の額で政令で定めるものを含むものとする。

 前項の債務の確定している公租公課の金額には、被相続人が、所得税法第百三十七条の二第一項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)(同条第二項の規定により適用する場合を含む。第三十二条第一項第九号イにおいて同じ。)の規定の適用を受けていた場合における同法第百三十七条の二第一項に規定する納税猶予分の所得税額並びに同法第百三十七条の三第一項及び第二項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)(これらの規定を同条第三項の規定により適用する場合を含む。)の規定の適用を受けていた場合における同条第四項に規定する納税猶予分の所得税額を含まない。ただし、同法第百三十七条の二第十三項の規定により当該被相続人の納付の義務を承継した当該被相続人の相続人(包括受遺者を含む。以下この項及び同号において同じ。)が納付することとなつた同条第一項に規定する納税猶予分の所得税額及び当該納税猶予分の所得税額に係る利子税の額(当該納税猶予分の所得税額に係る所得税の同法第百二十八条(確定申告による納付)又は第百二十九条(死亡の場合の確定申告による納付)の規定による納付の期限の翌日から当該被相続人の死亡の日までの間に係るものに限る。)並びに同法第百三十七条の三第十五項の規定により当該被相続人の納付の義務を承継した当該被相続人の相続人が納付することとなつた同条第四項に規定する納税猶予分の所得税額及び当該納税猶予分の所得税額に係る利子税の額(当該納税猶予分の所得税額に係る所得税の同法第二編第五章第二節第三款(納付)の規定による納付の期限の翌日から当該被相続人の死亡の日までの間に係るものに限る。)については、この限りでない。

信託法

(信託の存続の擬制)

第百七十六条 信託は、当該信託が終了した場合においても、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。

(債務の弁済前における残余財産の給付の制限)

第百八十一条 清算受託者は、第百七十七条第二号及び第三号の債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を次条第二項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。ただし、当該債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。

三井住友信託銀行の信託オンラインセミナー受講しました!

毎年開催されている、三井住友信託銀行主催の民事信託に関するオンラインセミナーを受講致しました。

もう何年も前から毎年開催されておりまして、数年前までは、大阪に出向いて現実出席にて受講しておりましたが、今はオンラインで受講できるため、大変ありがたいことです。

弁護士と公証人による最新情報の提供があり、興味を持って拝聴させて頂きました。

契約書の作成の仕方についても、元の信託法の「規定に信託条項を付加する場合には、『信託法〇条の他に』、元の信託法の規定を信託条項に入れ代える場合には、『信託法〇条に代えて』などと規定する方法や、受益者死亡終了の場合とそれ以外の原因での信託終了で残余財産の帰属先を分けることなど再確認ができました。

また、帰属権利者の定めなど、公開情報とするには、プライバシーの配慮が必要とのことで、信託目録に『令和〇年〇月〇日公証人〇〇〇〇作成に係る公正証書第〇条の通り』という書き方で、登記申請しているところではありますが、そういう取り扱いについて、否定的な見解を持つ登記官の存在があることなど、初めて耳にすることもあり、今後の取り扱いの推移に注意していきたいと思いました。

また、このセミナーでは、三井住友信託銀行における最新の信託口座開設申込の状況や地域別の案件数、士業別の案件数などを報告がありますが、純増傾向が続いている模様です。

当方事務所での案件数も確実に増えている実感がありますので、これは時流に乗ったもの判断できました。

まだまだ、必要な手続きになるべくこの民事信託・家族信託を勉強し続けて、よりよりサービスを提供できるようにしていきたいと思います。

2022年 謹賀新年

あけましておめでとうございます。

昨年は、一昨年から続くコロナ禍の中、生前対策の一環としての家族信託・民事信託の提案をする機会も例年以上に多くございましたし、当事務所でも1年を通じてずっと信託に関わってきたように感じる一年となりました。

今年は、例年通りの認知症対策としての家族信託・民事信託に加え、さらに、銀行や不動産業者とタイアップしながら、信託借入による手続きも提案・実行できたら嬉しいなと考えていおります。

成年後見制度で、スポット的な後見人の選任が可能にすべしという意見により、世の中が変わるかもしれませんが、借入をして建物を建築するといった相続税対策に成年後見制度がマッチするとは考えにくい話です。

そのあたりのニーズに応える家族信託・民事信託の組成に関わらせて頂きたく存じます。

本年も何卒、よろしくお願い申し上げます。

家族信託・民事信託勉強会アンケート⑤

先日、やらせて頂きました不動産会社における家族信託・民事信託勉強会のアンケートを提出頂きましたので、紹介させて頂きます。

その中のご意見やご質問に答えさせて頂きます。

信託契約書はそのご家族に応じて、様々な形がございます。

不動産が収益物件なのか?、受益者の住む自宅なのか?、帰属権利者が誰なのか?様々なケースがございます。

具体的な案件に応じて内容は異なりますが、モデル契約書などをご覧頂く機会を設けるようにしたほうがよりイメージつきやすかったかもしれませんね。

今は、親の不動産についての管理を娘さんがされているとのことですが、施設に入っているだけであれば、良いのですが、その方が判断能力がないという状態であれば、様々な問題(他の相続人との間での紛争など)が生じる可能性があります。もし、まだ親御さんに判断能力がおありであれば、家族信託・民事信託組成により、法律的にしっかりと管理を代わりにできるようにしていくことも一つの選択肢となりえると思います。

貴重なご意見まことにありがとうございました。

家族信託・民事信託勉強会アンケート④

先日、やらせて頂きました不動産会社における家族信託・民事信託勉強会のアンケートを提出頂きましたので、紹介させて頂きます。

その中のご意見やご質問に答えさせて頂きます。

共有不動産の管理に家族信託・民事信託を活用する事例は、当方も何度か経験しております。

共有者のお一人の認知症対策は、ニーズがあることだと思います。

マンションの共有者の区分所有法に基づく議決権行使における問題は、今後増えてくると思います。

どういうものかということですが、マンションは区分所有者による管理組合があります。その中で、決議をしていくわけです。

そのうち、専有部分が共有になっている場合、協議によって共有者の一人を議決権行使者と定めなければなりませんが、協議が整わない場合には、専有部分の持分の過半数を有する者が議決権行使者となると解されます。

しかし、建て替え決議においては、共有物の処分にあたり、全員の利害に大きな影響を与える行為であるから、共有者の代表者は全員の同意がなければ建て替え決議において議決権を行使することはできない。という、国交省の方針もあることから、過半数に満たない持分、たとえ100分の1の権利を持っている共有者であっても意思表示ができないといけないのです。

かなり、話が脱線してしまいましたが、高齢者の方は、いつ何時判断能力を失うことになることもありますので、施設に入っておられる共有者のお一人の持分を他の共有者に信託するなどの対策を取ることで、機動的な管理が可能になるかもしれません。

そのあたり、今後の財産管理の方針によるとは思いますが、家族信託・民事信託も選択肢の一つになりえるのではないかと思います。

貴重なご意見・ご感想ありがとうございました!

家族信託・民事信託勉強会アンケート③

先日、やらせて頂きました不動産会社における家族信託・民事信託勉強会のアンケートを提出頂きましたので、紹介させて頂きます。

その中のご意見やご質問に答えさせて頂きます。

当方もいろいろとお話させて頂く機会があった中で、何回お話をしても成年後見と家族信託・民事信託を選択的なものと捉えられることがございます。

似て非なるものであることを勉強会ではお伝えさせて頂きました。

本人の権利を守るのが一番の使命である成年後見制度は、財産の積極的な運用には馴染みません。

相続税対策のための建物建築資金の借入などは無理ですので、判断能力がしっかりあるときに、家族信託・民事信託による継続的な相続税対策が可能になるように、銀行や建設業者と相談しながら、進めていくことも、一歩先行く不動産屋さんには必要になるのかもしれません。

ご丁寧なご感想ありがとうございました。

家族信託・民事信託勉強会アンケート②

先日、やらせて頂きました不動産会社における家族信託・民事信託勉強会のアンケートを提出頂きましたので、紹介させて頂きます。

その中のご意見やご質問に答えさせて頂きます。

勉強会の中で、当事務所の報酬体系のご案内もさせて頂きました。実家の家族信託・民事信託組成で、当方報酬と登録免許税、公証人費用、信託口座開設費用で50万~60万円の費用が掛かることをご説明させて頂きました。

その費用をかけて、認知症に備えながらも、認知症にならずに亡くなられる方も当然いらっしゃいます。

火災保険と同じで、困ったことが起きた時に対処できるようにする為の家族信託・民事信託となりますので、その費用を安いと捉えられるか、高いと捉えられるかは、依頼者様によるところになります。

成年後見制度でしかできないこと(入所契約などの代理)もありますので、一概に選択的に成年後見と家族信託・民事信託の二択で比較し、どちらが優れている制度かを判断するということは差し控えたいですが、勉強会の際もお話させて頂きました通り、成年後見制度では、借入はできないので、継続的な相続税対策にはふさわしくないと言わざるを得ません。

成年後見制度を利用した場合と家族信託・民事信託を利用した場合の費用のシュミレーションということですが、成年後見制度は、もし、専門家が後見人に選任された場合、年に一回家庭裁判所の審判で報酬額が決定することになりますので、報酬額はその作業量や財産金額によって大きく変動することなります。

最低月15000円くらいはかかりますし、財産が大きい方であれば、月5-6万円かかることもございます。

年間18万円から72万円かかりますと、10年で180万から720万円かかることになります。

その点、家族信託・民事信託組成については、信頼する家族が管理をすることになるので、無報酬で設計するとランニングコストはかかりません。

組成にあたっての費用と比較検討して、どちらが費用負担が少ないかを判断することになろうかと思います。

ちなみに、当事務所で一番ご依頼の多い事例としてある、実家不動産(一戸建・マンション)の信託案件でいきますと、先程も申し上げました通り、50万から60万円のご負担となるケースが多いです。

この価格であれば、成年後見制度で専門家が後見人に就く場合より経済的という見方もできます。

ただ、制度が全く違うものですので、成年後見でしかできないこともありますので、家族信託・民事信託を組成していても、後見人を選任したほうが良いケースも当然ありますことご留意くださいませ。

認知症になり判断能力がなくなってしまったら、成年後見制度しか選択ができません。

そうなる前の選択肢の一つとして、検討するには、この制度を知っておかないといけません。

この制度の限界も含めて、おっしゃられておられる通り、リスク回避知識が我々専門家に求められているのだと思います。

Q.①見積りをするには、何が必要ですか?

信託する財産の内容(不動産であれば、不動産登記簿謄本と評価証明書)

          (金銭であれば、いくらを信託財産にされるか)

信託の内容(受託者は誰?帰属権利者は誰?)

が分かれば、見積もりが算出できます。

Q②子どものいない叔母様の話ですが、信託で、マンション含め預金も信託をして、叔母様の福祉のために財産管理をして運用することは選択肢の一つになろうかと思います。

負担付贈与という形で生前に名義を変えることもできますが、贈与税、不動産取得税のことを考えてたら、家族信託・民事信託で対応することは税金負担的にみても良いのではないかと思います。

もちろん、叔母様にとって、任せたい相手に後見人になってもらう契約(任意後見契約)もありますので、それをしておけば、別の人が後見人に選任されることもありませんので安心ですが、後見監督人の報酬の問題は依然残ります。

いずれにしても、様々な選択肢がある中で、家族信託・民事信託という選択肢も取っておいてほしいと思います。

貴重なご意見、丁寧なご感想を本当にありがとうございました!

家族信託・民事信託勉強会アンケート①

アンケートR3.12.13①
先日、やらせて頂きました不動産会社における家族信託・民事信託勉強会のアンケートを提出頂きましたので、紹介させて頂きます。

その中のご意見やご質問に答えさせていただきます。

Q・家族信託・民事信託は委託者と受託者とでどちらの相談が多いですか?

A・相談は、権利者から財産管理を託される受託者からのご相談が多いですが、委託者がその意向にしっかり同意して話を進めないと契約にはなりません。お互いが将来の財産管理について、真剣に考えられている方にマッチする制度であると思います。逆に、どちらかが、そうで無いときは、家族信託・民事信託の組成はないと思います。

当事務所でのヒアリングシートを今後御覧頂ける機会を作らせて頂きます。

どういう家族関係で、家族がどういう状態か。例えば、独居で健康状態は問題ないか、判断能力の減退の有無など。

あとは、財産はどういうものがあるかなど一覧性があるように作成されたヒアリングシートがございます。

先日は、不動産屋さんが扱う可能性のある典型的な事例を5つ紹介させて頂きました。

さらなるこういう事例の積み重ねにより、依頼者様への説明もしやすいものになることがわかりました。

事例については、日々実際に受託した案件の方がリアリティが生まれますので、ブログなどで紹介させて頂きたいと存じます。

不動産会社として、家族信託・民事信託に取り組む場合、何よりも継続的な相続税対策(借入含む)が可能になることが、本人の権利を一番大事にする成年後見制度との大きな違いではないでしょうか。

相続税の納税に苦しまれた親御様には、響くのではないでしょうか。

あと、認知症により判断能力がなくなって、介護施設に入所するのに、実家不動産を売却しなければ資金計画が立てられないご家庭には、認知症になっても、機動的にその実家不動産を売却できるように、家族信託・民事信託を導入することも選択肢になりえると思います。

ご意見、ありがとうございました!

不動産会社にて家族信託・民事信託勉強会

京都市中京区の不動産会社 有限会社レイバーランド様にて家族信託・民事信託についての勉強会の講師として招かれ、お話させて頂きました。

週に2回勉強会を開催されているという勉強熱心な会社ということでしたから、講師は暫くは業務多過のため、お引き受けしていなかったのを覆し、引き受けさせて頂きました。

税理士さんや保険会社さん相手のセミナーは、何度かやっておりましたが、今回、不動産会社さん相手のものが初めてでしたので、不動産屋さんに関わるであろう事例を想定して、家族信託・民事信託のことを考えるきっかけとなりました。結果、お招き下さり感謝しております。

なぜ、家族信託・民事信託が必要なのか?という点を考えるきっかけとなり、家族信託・民事信託の3大メリット(認知症対策・継続的相続税対策・2次相続対策)を伝えさせて頂きました。

いろいろなご質問も頂き、考えさせられる経緯となりました。

これからの超高齢化社会の中で、平均寿命と健康寿命の差(認知症などで判断能力を失っている期間)の資産管理をどうするかをしっかりしている間に考えてほしい。

家族信託・民事信託は生命保険と一緒です。認知症にならず、亡くなったら、特に要らなかったねと言えるものですが、認知症になって、何かしようと思ったときに選択肢がないのはもったいないように思います。

信頼できるご家族がいらっしゃるのであれば、一度、じっくりご検討してほしい制度です。

株式会社は信託受託者になり得るのか?

株式会社でも受託者になれるという見解を採用して、信託契約公正証書の作成する公証人がいらっしゃるようです。

当事務所では、株式会社での信託組成はお断りしている状況ですが、統一的な見解が出てきたらうれしいです。

受託者になれないと考える根拠は、①株式会社が請け負う信託引き受けは、信託の引受を行う営業にあたり、信託業の免許または登録を受けない限り、信託の引受を目的にすることができないこと、②特定の1回限りのものであっても、営利の目的をもって、反復継続して行うことが予定されている以上、信託業法の免許または登録が必要であるからです。

一方、株式会社を受託者として認める理由は、①信託法41条が法人である受託者の取締役の連帯責任について規定しており、信託法自体が株式会社は受託者になれることを前提にしていること、②信託業法に抵触しない態様で受託者になることを明示(定款に『信託業法に抵触しない信託受託者業務』と記載)することによって、信託業法との抵触を回避できること、③連続的に信託受託者となるものでなく、一回限りであることから信託業法に実質的に違反しないことなどが挙げられると思います。

後日、問題になりえることはできる限り回避するのが専門家の務めと心得ております。

実際、身内の株式会社が受託者になっていたとしても、金融庁が信託業法違反だと騒ぎ立て、その信託契約自体が無効になってしまうようなケースはきっとないからそういう提案をする専門家もいらっしゃるのかもしれませんね。

信託法(法人である受託者の役員の連帯責任)

第四十一条 法人である受託者の理事、取締役若しくは執行役又はこれらに準ずる者は、当該法人が前条の規定による責任を負う場合において、当該法人が行った法令又は信託行為の定めに違反する行為につき悪意又は重大な過失があるときは、受益者に対し、当該法人と連帯して、損失のてん補又は原状の回復をする責任を負う。

借地に関する信託

借地上の建物を信託する際、当然借地権の譲渡も伴うことになりますので、

借地権譲渡について地主の承諾を得る必要がございますので、注意が必要です。

建物に関して信託による所有権移転登記自体は、借地の地主の承諾がなくてもできますが、実体法上、建物譲渡は、借地権の無断譲渡の証拠ともなりえてしまうので、必ず、承諾を得てから登記名義の変更をされますことをお勧めします。

借地借家法(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)

第十九条 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

 第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

 前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。

 第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。

 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

 前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。