信託口座開設をしながら思うこと。

現在、将来受託者借り入れも視野に入れておられる方の信託組成のお手伝いをさせて頂いております。

その為、信託口座開設の為、奔走しております。

信託終了の規定は明確か。

親族間でトラブルになる可能性はないか。(遺留分侵害はないか)

第2受託者の規定があるか。

注意すべき点は沢山ございます。
いろいろな参考図書を見ていても、統一的な文案ではないようです。

正直、将来問題になるであろう書き方の文献もございます。

そういう意味で、しっかり研鑽を積んでいかないと将来大変なことになるということを肝に銘じつつ、業務に当たらないとできない仕事です。

ここ数年、日々信託業務の勉強をしてきていても、まだまだ至らぬ点が出てくる業務でございます。

また、法改正もございます。
今度創設される配偶者居住権の制度により、後妻の居住権を確保した上で、後妻死亡後に実の子供に承継させるといういわゆる受益者連続型信託が実現できるのでないかと思います。

できうる方法の中で、一番依頼者様に合った方法を提案することが、これからの専門家の一番大事になってくるところだと思います。

潜在的問題を抱えている方へ

先月NHKのクローズアップ現代+で家族信託が紹介されますと、やはり、放映後2~3日は、当サイト閲覧数が通常時の5倍近く増えます。
沢山の方にご覧頂き、検討してもらっているものと思いました。それだけ、こういった家族の高齢化に伴う潜在的問題が沢山の方の中に、潜んでいるものと思います。最近でこそ、家族信託・民事信託という言葉も耳にするようになりましたが、もっとどんどんテレビ・ラジオ・新聞で潜在的問題を抱える皆様に知ってもらえたら嬉しく思います。

その中で、お会いさせて頂き、委任契約を結ばせていただきましたお客様とお話しておりますと、テレビを見て、まさに、ウチに該当するということで、顧問の税理士さんに相談され、その税理士さんが懇意にされている司法書士を紹介してもらったそうですが、やはり、頼りなくて、当事務所にご相談に来られたということでした。

当方も、情報収集の為、各地に家族信託に関する研修を受講し、色々な文献も購読しているところですが、それぞれ言っていることが違ったり、明らかに間違っているものさえあるように思います。弁護士だからと言って、司法書士だからと言って、全てが全ての分野での専門家ではないのです。

当事務所では、この分野の専門家として、研鑽を続けております。
だからこそ、弁護士からこの分野におけるプロとして依頼を受けたり、他の司法書士からご質問を頂き回答させて頂いたりしているのです。

一人でも多くの家族の高齢化に伴う潜在的問題を抱える方の不安を安心に変えるお手伝いをしていきたく存じます。

税務上不利な扱いを避ける設計が必要

1つの賃貸不動産だけを信託財産とした場合、その不動産に関する不動産所得の損失の金額が生じたとしても、この損失は、租税特別措置法41条の4の2の規定の適用により、生じなかったものとみなされるため、所得税法における損益通算や純損失の繰越控除などの適用が受けられなくなります。

所有する全ての賃貸不動産を1つの信託契約の中での信託財産にすると、その中の賃貸不動産について、不動産所得の損失の金額が生じたとしても、他の賃貸不動産の利益の金額と相殺が可能になります。

このように、税務上、不利な扱いを受けないように、信託を組成することも非常に重要なので、賃貸不動産を信託する際には、税理士さんのアドバイスも受けておかれた方がよろしいかと思います。

NHKのクローズアップ現代+で家族信託が特集されます!

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4270/index.html

本日夜22時よりNHKの情報番組『クローズアップ現代+』にて、家族信託が紹介される予定です。

是非、ご存知ない方にご覧頂きたく存じます。

≪番組紹介文≫
親が亡くなったり、認知症になって判断能力が低下したりして、親の口座から必要なお金を引き出せなくなる人が続出しています。こうした事態に陥らないために、どんな対策をしておけばいいのか?親に判断能力があるうちに家族で契約を結び、預金などの名義をあらかじめ書き換えておく「家族信託」という仕組みや、親が認知症になった後でも活用できる「成年後見制度」について詳しく解説。そのメリットや注意点などをわかりやすく紹介します。

家族信託していても対処できないこと

当事務所でも、認知症対策に、家族信託を推奨しております。

但し、これは、財産の管理運用についてでございます。

例えば、家族信託契約を締結して、息子が受託者として、財産を管理していたとしても、委託者である親が認知症になり、介護施設への入所契約の主体となれないときや、借金まみれの兄弟が亡くなった際の相続放棄手続きなどをする場合には、後見人を選任して対応せざるを得ない場合もございます。

なので、結構間違って伝わっていることが多いように見受けられるのですが、信託制度は、後見制度に代わる制度ではございません。

正しく使える専門家にご相談下さいませ。

受託者借入について

受託者は、借入金を信託財産に属する財産で履行する責任を負いますが、それだけではその責任を負えないときは、自らの固有財産を責任財産として弁済に充てなければなりません。

信託法は、受託者に信託財産責任負担債務について無限責任を負わせることを一般原則にしております。

この一般原則に対し、信託法21条2項は例外規定を設けております。例外規定に掲げる権利に係る債務について、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負います。
⓵受益債権
⓶限定責任信託の特例における信託債権
⓷信託法の規定により信託財産に属する財産をもってその履行の責任を負うものとされる場合における信託債権
⓸信託債権を有する者との間で信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の合意がある場合における信託債権

金融機関の信託口座について

受託者は、信託財産に属する金銭や信託事務を処理するために支出する金銭を内訳明細表に記載し、収支計算書を作成します。

金銭は、その計算を明らかにする方法によって分別管理を義務付けられております。

金融機関にて信託口座を作成できれば、分別管理もでき、倒産防止機能も発揮できるわけですが、信託口座は、信託の効力発生要件ではありませんし、金融機関の対応が遅れているのが現状ですし、対応できても3000万円以上などの要件があるので、別の受託者名義の普通口座にて管理をせざるを得ない場合もあると思います。

そのことで、もし、受託者名義の口座が受託者死亡により相続が発生したときに、受託者固有の財産として、受託者の相続人により分割されるということになれば大変なことになります。

それを信託契約公正証書により、信託財産であるとして、次の受託者に引き継ぐことが出来れば問題ないのですが、現実、その局面に立ち会っていないですし、金融機関の対応が読めないので、そのあたりは慎重に事を図らなければならない点だと思います。

家族信託の契約書が公正証書である必要性

信託契約は締結により、その効力が生じますので、公正証書によることは信託の効力発生条件ではございません。

しかし、いざ、金融機関にて信託口座を開設したり、その口座にて借入を行うような場合は、必ず公正証書でないと金融機関が扱ってくれないということになります。

しかも、その内容を口座開設の前に打ち合わせて信託契約書案を作っていく必要がございますので、注意が必要です。

また、委託者と受託者の意思が第三者である公証人の立会いのもと作成されるので、後々、その時、委託者に意思判断能力が無かっただとか他の相続人に言われる可能性は低くなりますし、税務署に対して、しっかりしたもであることを主張しやすいかもしれません。

不動産だけを信託財産とする場合で、家族みんなが了解しているのであれば、公正証書にせずとも、登記に反映されることになりますので、私文書にて契約をすることで、公正証書作成に関する費用を浮かすことも可能です。

その日付に存在したという意味で、確定日付だけ公証人役場でとるのも良いかもしれません。

 

家族信託は想いを実現するツール

家族信託における受託者は、信託の目的を含む信託契約に従い、財産の管理又は処分及び『その他の信託の目的の達成の為に必要な行為』をすべき義務を負います。(信託法第2条5号)

先祖代々伝承されてきた家訓や遺訓を含む考え方も信託の目的に掲げることにより、子孫に、その伝承された家訓や遺訓も承継していくことも可能になります。

と言いますのも、信託契約は、委託者と受託者との契約ですので、受託者である娘や息子は、信託の目的に掲げられたこと(家訓や遺訓含む)に反すると法的責任を負うことになるからです。

家族信託は、まさに、次世代に対する教育的機能も持っているのです。

想いを実現するツールとしての家族信託に、限りない可能性を感じております。

新受託者の定めの有無の検討

家族信託を設定する時には、受託者が身近な家族いわゆる自然人になることがほとんどだと思いますので、必ず、健康・生命リスクを伴うことに留意しなければなりません。

受託者が任務を遂行出来なくなったときに備え、予めその任務を引き継ぐ新たな受託者を設けることも大事になってきます。

もし、そういう新受託者に関する規定がない場合、委託者兼受益者の合意で新受託者を定めることもできますし、もし、委託者に意思能力が無くなっていた場合は、利害関係人の申し立てにより、新受託者を選任することができるという規定も信託法に用意されております。

適任の受託者が見当たらない場合で、経済的事情が許される方は、商事信託いわゆる信託銀行や信託会社といった信託のプロを受託者にすることも選択肢の一つにするのも良いかもしれません。

 

富裕層の為だけでない家族信託

一般に、高齢者Aの不動産を代わりに、Bが運用、管理、処分していくのに、3つの方法が考えられます。

一つ目は①委任契約、2つ目は②贈与契約、3つ目は③信託契約で、AからBに権限を移行させることが可能です。

①の問題点としては、Aは委任契約を解除できるので、Bの地位は不安定であることが挙げられます。

②の問題点は、別途贈与税を課せられる場合の納税資金、不動産取得税の納税資金を考慮する必要があることが挙げられます。

③は、上記2つの制度に問題点をクリアにする制度ではあります。

但し、だからと言って、家族信託・民事信託ありきで手続きを進めることは致しません。

それぞれのご家族によっては、民事信託より生前贈与や商事信託がマッチすることもあろうかと思います。

ただ、選択肢の一つとして、家族信託があってほしいと思います。

何の検討もないまま、家族信託は、富裕層だけの為の制度だということで、選択肢から除外されることの無いようにして頂きたいと切に願います。

特に勉強不足の専門士業がそういうことをされると、お客様が本当に可哀そうだと思います。

 

 

 

実家の始末に困らないように。

『実家の始末』というタイトルで、2017年11月にNHKの情報番組『あさイチ』で家族信託が取り上げられて以降、家族信託の認知度も格段に上がり、一般的なものになっているのでしょうか?

実際、法律専門職への浸透は数年前に比べてかなり皆様興味を持たれている分野となっております。

我々が初めて、民事信託に取組もうとして、提案した案件は5年以上前ですが、分からないことはやめようという税理士も多く、実現に至らせることが非常に困難でした。

今は、新聞やTV番組でも取り上げられていることも分かるように、世の中に必要な制度として認知されてきたのだと思います。

 

しかしながら、まだまだ、一般の方の認知度はかなり低いものと思われます。

実家暮らしのご両親が認知症になって、その不動産を処分しなければならなくなる時に困らないようにする対策です。

ご家族全員にとって良い方向になり得る信託組成を心かけております。

なので、一部の推定相続人だけがメリットを受ける信託組成には慎重に取り組まざるを得ないのです。

その前段階で、もっともっと認知度を高めるために、情報提供、広報が必要です。微力ながら、家族信託普及の為の活動をしていきたいと考えております。