高齢者の財産などの処分や管理を家族らに託す「民事信託」の公正証書の作成件数が2018年に2223件だったことが1日、日本公証人連合会の初調査で分かった。遺言や成年後見制度よりも財産管理の自由度が高いことから増加傾向にあるという。
同連合会によると、民事信託は親(委託者)が子(受託者)に財産管理を託すことが多いため「家族信託」とも呼ばれる。増加傾向にあるとして18年から統計調査を開始。18年1~6月と19年1~6月を比べると前年比22%増だった。民事信託の公正証書作成は義務ではなく、総数はさらに多いとみられる。
例えば独居の親が自宅を子供に信託しておけば、その後、老人ホームに移った際、空き家になった自宅を売却して入居費などに充てることができる。成年後見では不動産売却に裁判所の許可が必要になることもあるが、信託なら不要で自由度が高いという。
認知症などで判断能力が乏しくなる前に信託契約する必要がある。信託で死後の財産の移転先を指定できるため、遺言書と同等の役割も果たす。日本公証人連合会の大野重国会長は「老後に備える『終活』に取り組む人が増える中、民事信託と任意後見制度を組み合わせて利用することも多い」と説明する。
同連合会によると、病気が末期状態の終末期に延命治療を望まない意向を公正証書で表明する「尊厳死宣言」も増えており、18年は1906件。遺言の公正証書も18年は11万471件で過去最多だった。