東京地裁平成30年10月23日民事第32部判決 請求棄却確定
平成29年(ワ)第25091号所有権移転登記等抹消登記請求事件で判示された内容を整理してみると、やはり、信託契約書の作り手の考えによって、依頼者の想いに反する結果になりかねないということを感じます。
信託法は、委託者及び受益者は、いつでもその合意により、信託を終了することができるとし、(164条1項)委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときには、委託者及び受益者は受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りではなりとしています。(164条2項)ところが、同条3項が、「前2項に規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めによる」と定めていますので、「受益者は、受託者との合意により、本件信託の内容を変更し、もしくは本件信託を一部解除し、または本件信託を終了することができる」との定めがあった、この判決の事例では、信託法164条1項2項の適用を否定する第3項の別段の規定であると判示されている。
信託に関する判例も、ぼちぼち出てきていることから、契約書作成の段階で、そもそもそういった規定を設けて良いのかどうかを委託者に確認することも大事になってくると思います。争いになったということは、この規定がそもそも別段の規定かどうかが争われたということですので、「信託法164条1項の規定にかかわらず」という文言を入れるなどして、明らかに別段の定めとすることも肝要であります。
以上のようなこともございますからこそ、真の意味での民事信託・家族信託の専門家による関与が必要なのだと思います。
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