受託者が委託者や受益者より先に亡くなることを想定していないかもしれませんが、現実にそういうことが起こり得ます。
当事務所で関与させて頂きました案件で、初めてそのような事案が発生しました。
突然のことで、驚きましたが、信託を継続するために、しなければならない手続きがございます。
当事務所で、段取りをさせて頂きましたのが、不動産の所有権移転登記(受託者死亡による)と信託口座の名義変更です。
不動産の所有権移転については、信託契約書に、後継受託者が記載されていましたので、その方へ移転登記をする為に、受託者が死亡した事実を示す戸籍謄本と新受託者の住民票を添付して申請しました。
ちなみに、受託者の最終住所地を証明する戸籍の附表もしくは除票が必要になりました。
一応、登記原因証明情報も作成して、新受託者から署名と押印を頂きました。
所有権移転登記になりますが、相続登記と同様、登記識別情報の添付もなく、新受託者からの単独申請にて,登録免許税も0円(登録免許税法第7条第1項第3号)でいけました。
信託目録に『後継受託者については、公正証書第〇条記載の通りとする』という内容で登記していたので、公正証書の原本を添付することで、巷で噂になっている信託原簿の更正登記をしてからの所有権移転登記とはなりませんでした。(京都本局)
金融機関(K銀行)の口座名義変更については、受託者の名前を変えるだけかと思いきや、一旦、旧受託者の口座は閉鎖して、新受託者の口座を開設するということでした。受託者が亡くなるケースは、K銀行でも初めてのこととのことでした。
家賃振込口座にしている場合は、賃借人に再度案内をしないといけないので、手間のかかることです。
今まで、考えもしていないことが起こりうる世の中です。
信託を取り巻く環境も、いろいろ変わっていくかもしれません。
その変化を常に肌に感じながら、スキルを高めて、依頼者様への法的サービスを充実させていきたいと感じる瞬間でした。