【登場人物】 お母様(77歳)長女(52歳)長男(43歳)
【内容】
遺言書作成の依頼から家族信託の必要性を感じられての案件です。
お父様は、既に他界され、現時点では、お母様はご実家に一人暮らしの状態でした。そして、お母様と長男の奥様との関係は、もう一つで、今後、お母様が年老いた時、介護をされるのは長女さんということを、姉弟で話し合い、遺言で、全ての資産を長女に相続させる内容で作成して欲しいとのご相談でした。介護をしていく中で、施設入居をするために、実家を売却し、お母様は長女さんが引き取り、実家売却金でその後のお母様の生活費を面倒みていくことを家族会議で決定されておられるのであれば、信託という形で、お母様が認知症になり、判断能力が無くなったとしても、長女の判断、タイミングで実家を売却できる状態にしておくこともご検討して頂くようご提案させて頂きました。
【解決方法】
お母様と長女との信頼関係はございましたので、お母様と長女との間に不動産に関する信託契約書を締結し、委託者、受益者をお母様に、受託者を長女とし、管理処分権限を受託者に単独で持たせることにより、委託者であるお母様の判断能力が無くなり、売却処分が必要になった際に、動きが取れる状態にしました。
これから取得する資産や不動産以外の資産についても、長男さんは介護を引き受けない代わりに相続しないことも家族会議で話会いが行われていました。
よって、不動産以外についても、遺言書を作成し、長女に資産を相続させるものとし、長男には遺留分の放棄もしてもらいました。
家族信託も遺言も、長女が万が一に何かあった場合に、長女の子供に長女の権利を全て引き継がせる内容にて作成させて頂きました。
【効果】
もし、この契約をしない場合のリスクは、お母様の認知症が進み判断能力が無くなってしまったとしたら、不動産を売却も賃貸に出すことも基本出来なくなります。しようと思った時には、成年後見人を選任し手続きをすすめることになるのですが、売却する為に選任された後見人であったとしても、お母様がお亡くなりになられるまで財産を管理し、毎年家庭裁判所に報告を提出する煩雑な管理をしなければならなくなりますし、専門家が後見人もしくは後見監督人に選任された場合には、お亡くなりになられるまで、継続的に後見人報酬もしくは監督人報酬が必要になることから費用負担の増大化のリスクもございます。
この家族信託契約により、契約締結時から不動産をお母様の代わりに管理し、もし、お父様の判断能力が喪失したとしても、長女が長女の判断とタイミングにより、不動産を売却することなどの運用・管理・処分ができるようになることで、お母様の認知症が進んでいく場合のリスクを取り除きました。費用負担も信託組成時単発の費用負担だけで済みますので、後見報酬の長生きによる増大のリスクも取り除くことが出来ました。
それにより、お母様が判断能力を無くしてから長生きをされたとしても、お子様である姉弟に困ることは生じることはないことから、お母様も姉第様の不安を無くし、安心に変えることが出来ました。
家族信託による認知症対策の他、遺言による資産承継、さらには遺留分の放棄まですることにより、生前での遺産分割を実現した格好となりました。お母様がしっかりしているうちから、管理運用は長女の代に移り、今後紛争が生じる可能性があった長男の嫁との関係でも、紛争を事前のなくす手続きを取ったことにより、非常に喜んでいただけました。