【登場人物】 お父様(75歳)お母様(71歳)長女(41歳)次女(39歳)
【内容】
弁護士さんからのご紹介の案件です。
お父様は、現時点では、正常な判断能力を有しているように見えるが、認知症と診断され、今後益々認知症が進行した場合には、お父様は施設に入居することになり、実家を売却し、お母様は長女さんが引き取り、実家売却金でその後のお母様の生活費を面倒みていくことを家族会議で決定されておられました。ただ、お父様の認知症が進んだ場合、実家を父の名の下で売却できなくなるリスクを心配しておられ、まだ判断能力があるうちに出来る対策はないかということで、ご相談にのらせていただきました。
【解決方法】
お父様と長女との信頼関係はございましたので、お父様と長女との間に不動産に関する信託契約書を締結し、委託者、受益者をお父様に、受託者を長女とし、管理処分権限を受託者に単独で持たせることにより、委託者であるお父様の判断能力が無くなり、売却処分が必要になった際に、動きが取れる状態にしました。お父様はお母様の生活のことを一番に心配されていらっしゃったので、ご自身が亡くなられたあとの受益者をお母様としました。
お父様とお母様のご意思を形にする為に、信託契約書の目的には、ご本人方が納得いかれるまで何度も何度も将来に向けての思いを文章化する努力を致しました。娘さんの前では話されないことをご両親だけの面談時にお話し頂いたりして、お互いの気持ちが通じるきっかけになったのではないかと自負しております。
受託者は、長女とし、長女に何かあった場合には次女が受託者になるように予備的受託者の定めを致しました。
【効果】
もし、この契約をしない場合のリスクは、お父様の認知症が進み判断能力が無くなってしまったとしたら、不動産を売却も賃貸に出すことも基本出来なくなります。しようと思った時には、成年後見人を選任し手続きをすすめることになるのですが、売却する為に選任された後見人であったとしても、お父様がお亡くなりになられるまで財産を管理し、毎年家庭裁判所に報告を提出する煩雑な管理をしなければならなくなりますし、専門家が後見人もしくは後見監督人に選任された場合には、お亡くなりになられるまで、継続的に後見人報酬もしくは監督人報酬が必要になることから費用負担の増大化のリスクもございます。
この家族信託契約により、契約締結時から不動産をお父様の代わりに管理し、もし、お父様の判断能力が喪失したとしても、長女が長女の判断とタイミングにより、不動産を売却することなどの運用・管理・処分ができるようになることで、お父様の認知症が進んでいく場合のリスクを取り除きました。費用負担も信託組成時単発の費用負担だけで済みますので、後見報酬の長生きによる増大のリスクも取り除くことが出来ました。
それにより、お父様が判断能力を無くしてから長生きをされたとしても、お子様である姉弟に困ることは生じることはないことから、お父様も姉妹様の不安を無くし、安心に変えることが出来ました。
そして何より、この信託契約書作成に当たって、それぞれの想いを伝えあう家族の話あいが出来たことが何より印象的な案件となりました。